人騒がせな「遺産分割の調停申立て」(不条理)

 今朝は晴天ながらも霜が降りていて非常に寒かった。昨朝も同様であった。予め車のフロントガラスに霜よけシートをかけていたが、霜注意情報の予報は当たらないこともあった。

 閑話休題。先先々月の9月30日、家庭裁判所から遺産分割調停申立書が自宅に届いた。身内の死亡による預貯金の遺産分割に関する事案である。身内の代理人弁護士が申立てをし、調停期日は、12月5日午前10時10分と指定された。

 当方としては、弁護士から、遺産分割について事前に何らの連絡・協議もなく、いきなり家庭裁判所に調停申立てがされたので、電話で抗議をした。当初から遺産分割について、当方として、「相続分無償譲渡」を考えていた。しかも、双方共遠方に住んでおり、わざわざ双方遠方にある家庭裁判所に出向く必要があるのか、遺産分割協議書で済む話ではないのか等である。

 これに対して、弁護士は、遠方か否かは問題ではなく、家庭裁判所に出頭するよう強く言っていた。また、調停調書で遺産分割を明確にしたいようなことも示唆していた。

 本来家裁の事案は相対交渉(ADR)から入るのが筋で、これが無理である場合に家庭裁判所に申立てをするのが一般的であろう。そこに至って初めて家事紛争(身内間の紛争)として認知されるものと考える。この点、民亊紛争とは異なる性格がある。それゆえ、一般的に、民事裁判は調停を経ることが義務付けられていない。

 さらにまた、わざわざ、双方手間暇をかけて、軽微かつ単純な事案のために裁判所に出向く必要性があろうか。費用対効果の点においても、何故、依頼人や相手方である当方のことをよく考えずにいられるのだろうか。

 しかも、本件は、紛争が認知できないのに、勝手に紛争があると決めつけ調停申立てをしたというおかしな点がみられることである。紛争の認知の有無は当事者同士の話合いがつかないとか、当事者の所在が不明等で遺産分割ができない場合を指すものと考えるからである。

 以上の当方の抗議があってか、10月17日、弁護士から、遺産分割協議書(案)を送付してきた。通常は、順序が逆であるのに・・・。しかも、そのまま遺産分割協議書(案)を飲んでも、預貯金の「解約手続きが終了した段階で」、調停申立てを「取下げする予定です。」との文言が付け加えられていた。

 この件に関し、一応文書で遺憾の旨の文書を16日に弁護士に送付していたが、行き違いになっていた。

 しかしこれでは問題は抜本的に解決しない。預貯金の解約手続きが終了した段階で取下げるということでは、特に郵便局は払戻に長期間かかる点から、調停期日終了後になる可能性もある。翌18日に、遺産分割協議書(当方は、相続分無償譲渡)等を弁護士に送付したが、解約が調停期日までに済ませられるか疑問であった。

 

 そこで、裁判所から送付されていた書類の中に、「進行に関する照会回答書」が同封されていたこともあり、同月23日、その照会回答書には、所要事項を記載するとともに、下記の2点につき、職権調査をして、調停拒否もしくは申立却下の審判をするよう要請する「上申書」を添付して裁判所へ返送した。 

                  記

 1 調停申立権濫用の疑いの点・・・家事事件手続法271条に掲げる「当事者が不

  当な目的でみだりに調停を申立てした」ことによる「調停申立の拒否」の処分

  (理由)❶事前の遺産分割協議がない(調停前置主義の趣旨・精神に反する)。

     ❷当方の相続分無償譲渡の意思確認を無視している。❸双方共遠方に居住し

     ており、無駄な費用・労力を強いている。❹本件は、家事紛争が認知できな

     いものであり、遺産分割協議書の作成で足りる簡素な事案である。❺本件は

     預貯金の金融機関からの払い戻しが主目的であり、債務名義を得るだけの必

     要性が希薄である。

 2 調停申立ての要件欠如の点・・・家事事件手続法255条3項に掲げる不適法な

  調停申立てによる申立却下の審判

  (理由)遺産分割の請求を裁判所にできるのは、当事者間に❶「調停協議が整わな

     いとき」、または❷「協議することができないとき」(民法976条2項)

     である。❶につき、代理人から遺産分割協議の申出自体なく、もしあれば、

     相続分無償譲渡を伝えていた。❷につき、協議ができない事情はなく、連絡

     を取ろうと思えば容易にとれたはずである。

 

 その後、裁判所からも、弁護士からも何ら音沙汰がなかった。そして、ようやく11月29日になって、裁判所から調停申立ての取り下げにより事件が終了したとの通知が届いた。翌30日には、弁護士から、解約が完了したので裁判所に取下げを提出したとの通知が来た。結局、取下げは、調停期日5日前で、1か月以上日にちを要したことになる。

 なお、裁判所に提出した上申書に対する回答はなかった。職権で調査するかしないかは、結局は裁判所の裁量とはいえ、一言、どうかということは、当方にあってしかりと思った。

 弁護士の対応に対しては、遺産分割協議書(案)を速やかに当方に送付してくれたことは評価できるが、当方にとっては、前述のような人騒がせな点が多く、もっと、ADRのことを考えたらと思った。