ADR考(6)の1

 

 


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 昨日は、台風25号の影響でムシムシと湿度が高く、暑かった。台風が来る前までは少しうすら寒く、長そでシャツの着用が必要なほどだったのだが・・・。

 民事事件は、刑事事件と違って、よほどのことでない限りマスコミ報道がなされない。ネット記事においても、特筆されるものでないとお目にかかることが少ないようだ。

 スラップ訴訟において関心を持つ身として、その前提になぜADRの利用を考えずに、いきなり訴訟に持ち込むのかに注目をせざるを得ない。

 今回、岩上安身氏が、橋下徹氏に対し、同氏からスラップ訴訟の提起を受けたとの理由で、反対に損害賠償請求の訴えを提起(反訴)したということである。

 岩上安身氏が、上記記事で少し述べているように、訴訟を受ける身として、精神的・肉体的な多大な労苦による困惑と経済的負担の重圧に思いを馳せると、ひょっとすると他人事では済まされないようにも思える。

 岩上安身氏自身、ジャーナリストの身であることから、このようなトラブルには慣れていそうにも思われるが、時に体調の悪さを口にする記事を散見するにつけ、なおさらとの思いがする。取材に長けても、訴訟には不慣れなのである。

 弁護士の場合はそれが職業であることから、おてのもの感がままあり、苦痛の度合いはそれほどないと言ってよいだろう。

 以前、小泉政権時に、「事前救済型社会」から「事後救済型社会」への転換が叫ばれた。一言でいえば、アメリカ型訴訟社会の転換を期してのことであった。その現れの一つが、司法試験合格者500人から3000人増員計画である。

 それはさらにどういうことを意味するかと言えば、つまるところ、警告もなく、話し合いもなくいきなり訴訟を提起することにも繋がろう。相手方から、「スラップ訴訟」と非難されても仕方のない側面もあり得る。

 スラップを仕掛けたと非難される者としては、家事事件ならいざ知らず、民事事件は原則として事前に相手方に警告したり、話し合いをしなければならない法文上の規定があるわけでないから、スラップとの非難は言われのないこととして受け止めよう。

 上記記事にも、橋下徹氏自身も、スラップ訴訟と言うこと自体が名誉毀損になると主張している。

 小泉政権時の政策の一つである「訴訟社会」が到来したと言っても過言でないだろう。かっては、大会社や金持ちは喧嘩(訴訟)せずとの言辞も聞かれたが、今では彼ら富裕層等までもが、率先して訴訟を起こしているのだ。確かに、その下地として、会社法の大改正で、株主やステークホルダーへの責任が増大したこともあるにはあろうが・・・。

                                 (以下続く)